INTERVIEW統計学を取り入れた、ダイキン情報技術大学による学びが組織を変える力に

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ダイキン工業株式会社

テクノロジー・イノベーションセンターデータ活用推進グループ

主任技師 板谷 修司さん(中央)

チームリーダー 山田 祥平さん(右)

チームリーダー 松園 泰典さん(左)

企業の取り組み

空調機器総合メーカーのダイキン工業は、AIやIoTテクノロジーに対応するため、2017年に「ダイキン情報技術大学」を設立。選抜された新入社員が2年間、この社内育成プログラムに取り組み、統計学の知識を身につけています。

ダイキン情報技術大学で
統計検定2級を受験

板谷|空調製品は住宅・商業・産業用とあり、ダイキンではそれぞれのハードウェアを作ってきましたが、だんだんソフト面が求められるようになってきました。いわゆる「モノ+コト」に踏み出すには、社内のIT人材が不足していたんです。採用したくてもIT人材は他企業との獲得競争が激しい。

 

ダイキンはもともと「人を基軸に置く経営」を大切にして、一人ひとりの成長が企業としての成長であると考えていますから、ならば人を育てるところに軸足を置こうと、2017年12月に「ダイキン情報技術大学」を設立しました。まず既存社員の講座をはじめて、翌年から新入社員用の講座を開講しました。

山田さん、松園さんは「ダイキン情報技術大学」の1期生なんですよね。

山田・松園|はい。

 

板谷|ダイキン情報技術大学では、単なる情報人材というよりも、π(パイ)型人材※といって、たとえば既存事業にフィットする機械や電気などの得意分野を持ちながら、情報技術をツールとして使っていける人材を育てることを目的にしています。

※2つ以上の分野の専門知識を極めた人材のこと

 

彼らも、もともとは情報系ではないんですよ。

 

松園|大学での専攻は冷媒物性の研究です。

 

山田|私は電気系出身です。

 

板谷|毎年、技術系の大卒者は300人ぐらい採用しています。そこから、彼らの時は100名、24年度は80名を選抜して、2年間、教育に徹します。彼らのような非情報系の人材をコンピューターの基礎から支援していくプログラムです。

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選抜はどのようにされるんですか?

板谷|おもには希望者です。1年目は基礎から入って問題解決まで。学業から事業に切り替えていく流れですね。2年目は部門での研修による実践。3年目で各部署に配属になります。

 

習熟度を見るために、基本情報処理技術者の資格と、統計検定2級を全員必須で受けてもらいます。まあ、卒業テストみたいなものですね。そこで統計検定を利用しています。

 

新入社員向け講座とは別に、既存社員から管理職まで、階層別教育も実施しています。

統計検定は、すべての方が受けるのですか?

板谷|新入社員講座の受講生は必須です。既存社員は時間が限られているので取得推奨としています。

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新入社員向け講座の様子

統計学がデータの精度を上げ
研修テーマが充実

テーマとは?

板谷|新入社員講座2年目で取り組むべき、現場の困りごとを研修テーマに据えるんですが、IT技術で解決したいテーマを各事業部でヒアリングしても、最初はなかなか集まらなくて。

統計処理しようにも、何の目的でデータを取っているかもわからなかったり、同期されていないデータしかなかったり、それが7年前の状況ですね。

 

学会発表のような報告会というのを新入社員講座2年目で4回行って、各部門が情報をオープンにしています。そうすると、ほかの事業部の人たちが「こんなことができるんだ」と参考にしたテーマや横展開するようなテーマが増え、なおかつテーマ自体のレベルをも上がりました。

なるほど。取得するデータにも、変化はありましたか?

板谷|稼働状況把握など限られた目的で取っていたデータを、処理目的でいろんな情報と同期させるようになるなど、そこは大きく変わってきています。

 

山田|統計の知識を持つ人材が増えたことによって、データ間の関係性に気づき、「こういうデータも取っていった方がいい」と気づくことが多くなったのではないかと思います。

現場でも統計学の知識が生かされているんですね。

山田|たとえば私の場合、空調機の試験データをどのように効率的に取れるかを考えるときに統計学の実験計画法を使ったり、データ分析をする際は、データをどのように可視化をしたらよりよい考察ができるのか、また人にわかりやすく伝えられるのかなど、沢山の場面で統計学の知識を使っています。

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データを正しく取り扱うことができるほどテーマの幅が広がり、そこに統計学の知識が下支えとしてある。

山田|新たなテーマが生まれるというよりは、深掘りされて、より高度化したテーマが増えている印象ですね。

 

板谷|人によっては、研修テーマに継続アサインして配属されていくこともあります。

事業部横断のネットワーク、
データ人材が組織間をつなぐハブに。

松園|たとえば我々の同期と2・3・4期生が一緒になって、同じようなデータを個別に持っていた3部門を統合し、プラットフォームをつくった事例があります。同期ながらすごいなと感心していますが、情報技術大学修了生をキーにした動きができたのは急激な変化だと思います。

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確かに。すごいことですね。

松園|同じようなデータを持っているのに、連携が取れてないことって、どの企業でもあるじゃないですか。

板谷|以前だったら、まったく情報共有ができないところを、彼らの世代から、同期や先輩と縦横斜めのネットワークが社内に張り巡らされて、ネットワークが繋がるようになり、先ほど言ったような事業部を横断したテーマができるようになりました。

それは一緒に学んだからできること。そして根拠となるデータが示されているからですね。

板谷|弊社の場合は、まず人がデータをつないでいるかもしれません。

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情報技術大学で学んだ方のほうが、論理的に物事を解釈することに長けていると思うのですが、コミュニケーションで困ることはないですか。

山田|ありますね。そういったことを減らすために、既存社員向けの講座があります。印象深かったのは、幹部が急にAIに詳しくなっていたことです。それまでAIを使った分析結果を見せても「AIって何?」って感じだったんですが、突然「この観点が抜けてるんじゃない?」とか、私が指摘される側になって(笑)。何でだろうと思ったら、幹部向け講座を受講していました。

へー!講座がめちゃくちゃ役に立っている!講師はどなたが担当されるんですか?

板谷|専門的な分野は外部から先生に来ていただいて、たとえば大阪大学の集中講義を受けてもらうカリキュラムもあります。一方で、彼らみたいな修了生が講師になって、内製でやるようなこともあります。

松園|阪大の講義は面白かったです。AIの理論に触れることができて機械工学出身の私には新鮮だったことを今でも覚えています。もちろん難しくもありましたが(笑)。やはり体系的な知識はベースになるので必要です。統計検定も体系知識のインプットとその評価という位置づけで利用しています。

体系知識のインプットと同じくらい大事にしているのが経験です。実際に手を動かして分析してみる、システムを構築してみる、といった経験の獲得を狙って内製講義を設計・実践しております。そうすることで阪大講義や統計検定で吸収した体系知識が経験と結びつき、業務の中で活用できる活きたものに昇華されると考えています。

データを扱わない方にも、統計の知識は必要だとわかっていただきたいですね。

松園|生産現場でも、じつは統計の基礎的な知識を使っています。たとえば、品質管理検定というのがあって、QC検定っていうんですが、その本質が統計であることがあまり理解されていない。QC七つ道具※といって、それは、統計の手法がベースになっている。これらを使えばある程度の品質管理ができるというテンプレート化されたものだと私は理解しています。
※QC(Quality Control、品質管理)に必要な7つ。散布図、チェックシート、管理図、特性要因図、ヒストグラム図、パレート図、層別・グラフのこと。

ただ、今までの大量生産・大量消費の時代には合っていたけど、個別最適化の時代においては、そういうテンプレートはなかなか使えない。だから今後必要になってくるのが、おおもとにある原理原則、つまり統計の知識なのだと思います。

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——板谷さん、松園さん、山田さん、お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。

 

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