NEWS小野薬品工業株式会社研究本部での取組事例

経緯

post-2597当社研究本部では、2年程前に、データ解析のリテラシー向上を目指して、統計解析を勉強するサークルを企画しました。立候補でメンバーを募り、多拠点,分野別に4つのサークルが結成されました。

その中の一つ、薬効薬理部門のサークルにて、統計検定2級を活用することに決めました。

 

統計検定2級を活用した主な理由

統計の基礎学力定着をはかり、サークル活動のモチベーションを維持するためです。

当座の到達目標レベルが近かったこと、学習した証が検定合格という分かりやすい形で残ること、日本統計学会が認定する内容であることで、安心して活用することができました。

スタッフ部門のサポート体制

学習を推奨するスタッフ部門は、受験に必要な教材(テキスト・過去問集など)の準備、受験料や日当支給の確認手配、模擬試験の実施とその結果に基づいた学習サポートを行いました。そのほか、受験一カ月前から試験前日まで一日一問の検定対策を解答つきで毎日メール配信し、検定の出題範囲の内容と業務で発生しうる解析技術との意味的なつながりを確認するなど、様々な工夫を凝らしました。

頑張りの成果としての全員合格

受験するサークルメンバーは日々の業務の傍ら、学習時間を工面し、各自での頑張り、学び合い教え合うことのありがたみを感じながら、受験に備えました。そして、受験者全員が見事に一発で合格することができました。合格した達成感のみならず、その過程で得られた一体感と部署を超えた繋がりもメンバーの貴重な財産になりました。

合格後のサークル活動

合格後のサークル活動は実務応用という形で活性化しました。成績優秀者となったメンバーは、統計検定サイトへの体験記の投稿、サークル活動を社内報に掲載するなど、勉強成果の宣伝につとめました。応用が得意なメンバーは最新の解析技術に着目し、目利きが得意なメンバーは、最新技術が応用可能な研究データに目星をつけ、メンバー全員でそれらを揉み、ベテラン研究員が全体をまとめるという、各自の個性や特徴を生かした理想的な活動になりました。活動から生まれた発想の一部は、創薬プロジェクトの方針決定に活かすことができ、その成果も含めた全体的な取組みにより、メンバー全員が研究本部内で表彰されました。

今後の展望

統計は研究開発部門とどまらず、あらゆる部門のあらゆる場面で活用することができます。統計検定をデータ解析のリテラシーを身につけるツールとして社内外に広めていけたらと思います。

 

統計検定を活用する皆様へのメッセージ

統計検定2級は業務で直接用いない理論も出題範囲になっていて、非効率ではないかという意見があります。しかし、発展的な解析技術を身に付けるうえで、その根幹となる基礎理論を省略することは得策とは言えません。たとえば、現実のデータに手法を適用する場面で、ユーザーが気づかぬレベルで誤用するおそれがあります。誤用によって出てきた解析結果に基づいて重要な意思決定をすることがあれば、その顛末は推して知るべしということになります。
今回ご紹介したサークルメンバーの状況(薬理の実験研究者の立場)でもう少し掘り下げてみたいと思います。実験は計画が命といっても過言ではありません。メンバーは、データの取りうる分布、アウトプットの評価方法、それらに見合った群構成など総合的に勘案して、自ら試験計画を決定します。たとえば、評価項目がポアソン分布に従う事象だったとして、ポアソン分布そのものの理解がなければ、活用しようという発想すら生まれないばかりか、必要例数の見積もりが過剰になったり、実験そのものが無駄になったりする可能性があります。また、探索的な研究段階では、実験結果だけでなく、多方面の情報を活用して、つまり、広く大きなデータ群の中からターゲットとなるファクターを絞り込まなくてはなりません。そのためには統計手法による予測、分類、推論が威力を発揮します。統計的思考力が高ければ、各自の持ち合わせている専門分野での経験と勘に加えて、さまざまな統計手法を活用しながら事象を深く掘り下げることが可能になることでしょう。メンバーはこのような考えに理解を示し、統計検定2級を学習ツールとして取り入れることに賛同してくれました。学習のスタートの時点で、統計検定を活用する意義を共有しておくことが理想です(以上、私的な見解であることにご留意ください)。
分野により、統計を活用する場面は異なると思いますが、本事例が皆様の参考になれば幸いです。

 

PBT方式試験

統計検定1級

「統計数理」「統計応用」

次回検定 2025年1116日(日)

CBT方式試験

統計検定準1級〜4級
調査士系・データサイエンス(DS)系